「父は、日本が負けるとは夢にも思っていなかったと思います。」

「それでは、なぜ、1日数10キロも走ったのですか」と町会長。
 
「動体視力を上げるためとしか考えられません。」

「お父さんも卓球をやっていたのですか」と町会長。

「卓球ではなく、抜刀術に必要だったのだと思います。」

「抜刀術に高い動体視力が必要なのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。抜刀術だけでなく、剣術家は動体視力が高くないと強くはなれません。」

「卓球と同じなのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。動体視力が高くなると、ボールが遅く見えるだけでなく、スイングスピードも早くなるので、球威が増します。3球目攻撃に必要な回り込みも、すばやくできるようになります。」

「なるほど。」

「毎日30キロ走って、動体視力を上げ、世界選手権で優勝した日本人選手がいます。」

「それでは、抜刀術においても、動体視力が上がると、相手の動きや刀が振り下ろされるのが遅く見えるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。それだけではなく、相手が刀を振り下ろそうとする瞬間に踏み込んで、相手を先に切ることができます。」

「なるほど。しかし、お父さんは、抜刀術を隠していたくらいだから、抜刀術で日本チャンピオンになろうとはしていませんよね」と町会長。

「剣術は表芸だが、抜刀術は裏芸なのだと思います。」

「それは、どういう意味ですか」と町会長。

「剣術は一人では強くなれません。稽古をする相手が必要です。」

「抜刀術は一人で練習することができるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。しかし、相手の動きを一瞬で読み、踏み込んで相手を切らなければならないので、一人では完全な習得ができないのかも知れません。」

「しかし、剣術に比べれば、一人で練習して、高度なレベルに達することができるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。父は、毎日のように木刀を振っていましたが、剣道で勝つためではなく、相手が剣を振り下ろす瞬間をとらえるためだと思います。」

「相手と同じ動作を練習していれば、相手が剣を振り下ろす瞬間を感覚的にとらえるのが容易になるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。居合や抜刀術は、練習の仕方を工夫し、毎日走っていれば、人知れず高い技術を保持することができます。」

「居合や抜刀術は強くても知られずに済むが、剣術の練習では相手が必要なので、強いことを隠すことができないということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それで、『剣術は表芸だが、抜刀術は裏芸』ということになるのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/5/21

<筆者の一言>
息子に、『髪を切るか、縄跳びの回数を増やすしかない』と言ったら、だいぶ長くなっていたこともあって髪を切った。しかし、自然の摂理による秋太りは強力で体重は毎日100グラムしか減らなかった。

それでも、1月に入ると体重は17キロ減っていた。毎日100グラムでも、1ヶ月で3キロだ。体重は計算通り減っていたのだ。

その頃、スーパーアルプスで売っている100グラム強のステーキを食べた。筆者は、東洋医学的観点からステーキが体重に大きな影響を与えるかも知れないと思い、ステーキを食べたことを記録しておくようにと言った。<続く>

2024/5/8